King Kunta
アメリカのラッパー、ケンドリックラマーにより2015年3月16日にリリースされたアルバム「To Pimp A Butterfly」に収録される一曲です。
このアルバム全体が、アフリカ系アメリカ人としてのルーツや、アイデンティティ、とりまく社会問題へ向き合う内容であり、まるで教科書のようなボリュームです。
まず曲名のKing Kuntaとは、同じくアメリカの作家アレックスヘイリーが1976年に発表した作品「ルーツ」に出てくる、ヘイリー自身の祖先としての最初の登場人物、クンタキンテのことであり、
ケンドリックが自分自身をクンタに見たてて歌い上げています。
そして、歌詞はまるで敵に対するかなり攻撃的なものに感じますが、どっちかというと、黒人としてのルーツを辿り、乱れつつあるラッパー文化を批判し、仲間たちや同郷の者たちへ警告している曲のように思えます。
またケンドリック自身がヒップホップに限らず、ブラックミュージック全般を愛していることが、音によく現れており、
緊張感のあるシンプルなビートが際立つ冒頭から徐々に重なっていき、音の厚みが増していく流れはとにかくセンスが良すぎて痺れます。
黒人としてのアイデンティティや、ラッパーとしての誇り、そしてアフリカへの憧憬を強く感じる一曲です。
歌詞と考察はこちらを参考にしています。
https://genius.com/Kendrick-lamar-king-kunta-lyrics
*意訳と推察を多く含みますので、苦手な方はご注意ください。
言いたいことがある。
俺はお前ら、
猿みてえな口の野郎共に、
二度と俺の王座に座ってほしくねえ。
"おい、どういうことだ!
K-Dotがこの場に帰ってきたぞ!"
*K-Dotはケンドリックのメジャーデビュー前のステージ名。
頭に来てんだよ。
だが、絶望してるわけじゃねえ。
真の仲間たちよ。
一つ聞きたい。
クソッタレ。
俺が歩いてるとき、お前は一体どこにいた?
俺は今、このゲームの王者。
人々の羨む世界をすべて手に入れた。
*walk=歩く=貧しい、run=走る=裕福の対比表現。
"キングクンタ"
全員が彼の足を切りたがってる。
*何度も農園から脱出を試みる奴隷のクンタの足を切り、逃げないようにするというストーリーに基づく。
"クンタ"
だが、黒き男は負けなしだ。
クソッタレ。
俺が歩いてるとき、お前は一体どこにいた?
俺は今、ゲームの王者。
人々の羨む世界をすべて手に入れた。
"キングクンタ"
全員が彼の足を切りたがってる。
あんたがヤムを手に入れたときには…
(ヤムってなんだ?)
ヤムってのは、こういう力さ。
*yamとはヤムイモのこと。アフリカでは主要食材として使われており、権力者にとって己の力を象徴するものでもあった。クンタにかけてアフリカにルーツがあることを表している。
お前がその匂いを嗅げるのは、
俺がこの場所に現れたときだ。
(ああ、そうだ。俺たちは感じる)
俺はラップを愛してる。
だけどラッパーには
ゴーストライターがついてるだって?
*同世代ラッパーでゴーストライターの存在を疑われる者がいた。本音とリアルを語るヒップホップの道理に反していると批判している。
一体なにがどうなってんだよ!
誓うが、
俺はそんなこと言うつもりはない。
だがな、奴らの多くが、
柵の後ろで手を組んでるようだ。
二人1組になって、
下段のベッドで寝るのを好むあんたのようにさ?
まさに水に薄まって広がる"なにか"。
(水に薄まるなにか)
*水面下で広がる悪事を表す。
もし俺が飴玉欲しさに媚び諂ったんなら、
金持ちになるよりも、
乞食に落ちたほうがマシだ!
(ああ、そうさ!)
*ケンドリック自身は横行するズルや悪巧みを一切しないと宣言している。
クソッタレ。
俺が歩いてるとき、お前は一体どこにいた?
俺は今、このゲームの王者。
人々の羨む世界をすべて手に入れた。
"キングクンタ"
全員が彼の足を切りたがってる。
"クンタ"
だが、黒き男は負けなしだ。
クソッタレ。
俺が歩いてるとき、お前は一体どこにいた?
俺は今、ゲームの王者。
人々の羨む世界をすべて手に入れた。
"キングクンタ"
全員が彼の足を切りたがってる。
あんたがヤムを手に入れたときには…
(ヤムってなんだ?)
そのヤムってのは、
リチャードプライヤーを狂わせ、
ビルクリントンを欲望で操つる。
*ヤム(権力の象徴)を人を惑わすもの、ここではクスリや欲望に例える。
24時間7日365日間、
休みなしで二度繰り返しながら、
俺はステージに降りたつことを考えてきた。
その場所に戻り、敵を見据え、
そして俺は言う。
クソッタレ。
俺が歩いてるとき、お前は一体どこにいた?
俺は今、このゲームの王者。
人々の羨む世界をすべて手に入れた。
"キングクンタ"
全員が彼の足を切りたがってる。
"クンタ"
だが、黒き男は負けなしだ。
クソッタレ。
俺が歩いてるとき、お前は一体どこにいた?
俺は今、ゲームの王者。
人々の羨む世界をすべて手に入れた。
"キングクンタ"
全員が彼の足を切りたがってる。
お前は史上最悪のイカレ野郎だ。
俺はあのラッパーどもを殺すつもりだった、
だが奴らは自滅した。
全員が悲惨な運命、
俺の助けはいらねえらしい。
こんなことになるなんて、ガキにもわかることだろうよ?
俺もきっとムショ行きだな。
お前のアイデンティティーを撃ち壊して、
左足を引きずって逃げたんなら。
*この曲で一番わからなかった表現😭とくにbouncing to the leftが訳わかりませんでした…
Geniusは右足を切られたクンタが左足だけで歩く様子を表しているとしてるけどしっくり来ず。
俺の街に旗を突き刺さして、
全員が叫ぶんだ。
"コンプトン!"
そんなことになるんなら、
俺はたぶん市長にでもなるべきだぜ
正直に言って。
母さんと、恋人を隣に連れてな。
二千万円で、
裁判所の建物から堂々と出てきてやるよ。
*二千万がなにかわかりませんでしたが、示談金、もしくは保釈金かな?と思いました(自信なし)
な、
最高だろう?
ああそうさ!
裁判官なんてクソくらえ。
俺は25歳を超えた。
*ケンドリックの生まれは最も危険な地域のひとつといわれるコンプトン。貧しい人々は25歳まで生きられるかわからない、それぐらいに厳しい環境だと語っている。
奴の後ろのあの世界で、
かつて俺はヘンテコな髪型のガキだったよ。
*ここでいう奴とは先に出た悪徳裁判官のこと。アルバムのジャケットにあるように、倒れる裁判官の像を踏みつけながら、後ろに立たずむ少年たちの一人だったということを表している。
人生は腐ってる。
だがな、夢みたいにトべる場所でもある。
こう叫ぶのさ、
"アニー、大丈夫?
アニー、大丈夫?"
金のナンバープレートのついたでけえ車。
下から這い上がって今ここは猛獣の腹の中。
貧民から王子へ、
そして、まぎれもねえ王様へと!
(ああ、そうさ!)
クソッタレ。
俺が歩いてるとき、お前は一体どこにいた?
(銃声)
次のポップスを聴くまでに、
このファンクがお前の中へ貫くだろう。
(銃声)
俺は今、このゲームの王者。
人々の羨む世界をすべて手に入れた。
"キングクンタ"
全員が彼の足を切りたがってる。
"キングクンタ"
だが、黒き人間は負けなしだ。
クソッタレ。
俺が歩いてるとき、お前は一体どこにいた?
俺は今、このゲームの王者。
人々の羨む世界をすべて手に入れた。
"クンタ"
全員が彼の足を切りたがってる。
ファンク、ファンク、ファンク…
私たちはファンクが欲しい。
私たちはファンクが欲しい。
今、もしあなたにファンクを上げたら、
受け取ってくれるかい?
私たちはファンクが欲しい。
今、もしあなたにファンクを上げたら、
受け取ってくれるかい?
お前の矛盾をいつまでも覚えておくよ、
影響力を使ったその誤りをな。